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「行かないんですか?」 「憧れの特捜部だからね。行きたい人間は多いだろうけど。俺はきつそうだから遠慮させてもらってる」 「そうなんですね。確かに休みもなさそうですし」 「国税だって査察部だけで年間300億も検挙してるんだから忙しいよね?」 「特捜部ほどではないです。うちは調査部と実施部で分担されてますから」 「調査部が内偵調査で実施部がガサ入れ担当だよね。でもノルマがあるでしょ?」 「数字のことは結構言われます。多分それはうちだけじゃなく特捜も警察も同じでしょう」  よく知っているなと思う。いくら業務上関わっているとはいっても国税内部のことを知っている検事はそういない。吉葉もあまり知らなかったし、おそらく水落もそこまで知らない。  先ほど裁判の調書の話をしながらもそれを思った。知識が深いこともさることながら、情報通でもあるのかもしれない。 「君みたいな華奢な若い子でもこなせるなら俺がきつそうだからって断れないな」 「いえ、それはもう個人の考え方次第ですから。僕も正直道を誤ったかなと思うこともあります」 「でも水落さんはアドバイスしてくれるでしょ?」  ああそこでまた水落の話に戻った。わざとなのか。
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