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「二極化してるってことですよね。どっちが本性ですか」 「それは俺にはわからない。水落さんだって自分自身のことがよくわかっていないんじゃないかな。自分の本質を自分で把握できていなくて、持て余している」  その通りだと思う。凄い。何故わかるのだろう。 「他人の心理を読んで読んで読みまくる水落さんが自分のことがわからないっておかしいよね? でも水落さんだって全部の人間の心理を読めるわけじゃない」 「八割くらいだと聞いてますけど」 「どうだろうね。実際の数字は知らないよ。でも仮に八割だとして、じゃあ残り二割は読めない。何故読めないかって、その二割は特殊な人間、つまり複雑な心理構造の人間だからだ」 「複雑な心理構造?」 「そう。『普通はこう思う、こう行動する』という水落さん基準で言うところの『一般的なパターン』から外れた思考、言動をする人間がその二割なんじゃないかな。で、水落さんは自分がその二割側の人間なんだよ。だから自分が理解できない」 「……」  一般的な言動パターンから自分が外れているから、自分のことが読めない?  そんなことってあるのだろうか。  確かに自分で自分のことがわからない時は宝来にだってある。何でこんなことを言ってしまったんだろう、してしまったんだろう、そんな自分がわからない、と。  しかしその手の『わからない』ではないのだろう。
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