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「嫉妬していることを相手に言いますか?」 「言わないよ。喧嘩にならないまでも気まずくなるでしょ」  そうでしょう。そうですよね。どう考えてもあの人が特別嫉妬深く子供っぽいだけじゃないか。 「大人ですね。流石です」 「普通だよ。みんなそうじゃないの」 「僕は恋愛経験が乏しいので普通がよくわかりません」 「純情そうだもんね。そういうところが好きなんだろうな」 「好きって誰が…」 「水落さんが」  そう言って志賀はまた微笑んだ。  やっぱり。やっぱりこの人は読んでいる。  というか最初からすべて察した上で会話していた。それがわかってぞっとする。  ああ水落が気に入るくらいだからこの男も鳥肌を立てるタイプの人間、つまり同類だったのか。 「…そういうわけじゃないと思います」 「そうなんだ。じゃあそうかもね」  そして軽く流された。思わせぶりだ。 「僕の魅力は未熟なところっていうことですか」 「違うよ。人は誰でも自分にないものを求めるから。水落さんが自分に純粋な部分が欠けていると思うなら、そういう人を欲するんじゃないかと思っただけ」 「他にもそういう人はいるでしょう」 「いるだろうけど境遇の一致した人はそういない」  どこまで知っている? 長篠に死んだ父親については知られているからそれとして。水落の過去も当然知っているだろう。じゃあ境遇の一致まで把握していて当然なのか。
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