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「…罪悪感があっただけです。自分が摘発した対象者が死んだんですから。息子に対して負い目があって当然でしょう」
そう言うと志賀は驚いたようにこちらをじっと見据えてきた。
「じゃあ君は、水落さんの摘発者の息子だったのか」
知らなかった?
調べたわけじゃなかったのか。何だ。すべて推測で物を言っていただけなのか。
「なるほどね。ああ、そういうことだったのか。だから水落さんが君に執着していたんだね」
しかしそこで納得されてしまった。おそらく彼の中の疑問のピースが繋がったのだろう。
「騙されるところでした。志賀さん、実は何も知りませんね?」
「はは。そりゃそうだよ。調べてないのにわかるわけがない。でも当たってたでしょ」
「……」
「だけど凄いね。その時の子供がこうして同じ業界に入って顔を合わせることになるなんて。運命的だ」
水落のようなことを言う。全然運命じゃない。試験を受けて受かったから入庁しただけのことだ。顔を合わせるのは当然のことだろう。
「いえ。自分が生きる意味をこの仕事に見つけたかっただけです」
「そう。そんな人もこの業界にはいると思う。お父さんの事件については調べ直した?」
「そんな暇がないほどの多忙さです」
調べようとしたらできるだろう。だがまだ新人の自分はそれどころではないというのが実状だ。
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