5477人が本棚に入れています
本棚に追加
「そういう話、水落さんに訊かないの?」
「否定されましたけど。どこからどこまで嘘か本当かわからないので」
「信じてあげてよ。君にはきっと嘘はつかない」
何故わかる。嘘や隠蔽や工作ばかりの男なのに。
信じたいけど。信じたいけど、まだ完全にできない。
だからこそ上手くいかないのだろうか。
「君たちは深い話をまったくしていないんだね。お互いをまだ誤解したままなんじゃないの?」
そして鋭いことを言われてしまう。
「誤解、ですか?」
「いや、水落さんのほうは君のことをあらかた読んでいるだろうね。でも君がまだ水落さんのことを大部分誤解している気がする。友達がいるかどうかも知らない。暴力団との繋がりも知らない。そして自分のどこが気に入られているかさえ知らない」
「そこまで親しくありませんから」
「君がそう言い切るなら構わないよ。俺は何も言わない」
水落と違って志賀は流してくれる。だから楽だ。曖昧なまま、有耶無耶なままで通させてくれる。
何というか、掴みどころのない人だ。何を考えているのかさっぱりわからない。
しかし感情の波がない分、人と喧嘩にもならないだろう。
つまり恋人とも水落と宝来がするような喧嘩にはならないはずだ。
最初のコメントを投稿しよう!