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「…さっき志賀さんの恋人の話をされましたけど」  そこで話の矛先を変えたけれど志賀はまったく意に介さず受け入れてくれる。 「うん」 「その恋人は逆に、志賀さんと他の女性の仲を嫉妬してきますか?」 「してこないね」 「それはお互いを信じ合っているからですか?」 「それもあるとは思うけど、多分そういう感情を出したくないんじゃないかな」  そうか。やはりお互い大人だから上手くいっているのだろう。嫉妬や束縛は喧嘩の元。そんな感情がありつつも相手の気持ちを尊重して、気まずくならないよう努力しているに違いない。そうしないと上手くいかない。  宝来も水落もお互いの感情を出し過ぎなのではないか。抑えるところを抑えなければ、調和はとれない。 「嫉妬ってみっともないと思いますか?」 「そんなことは思わない」 「恋人から嫉妬されたらどうですか?」 「嬉しいよ」  意外な返答がきて驚く。嫉妬の感情を相手に出さないというからてっきり否定的なのかと思っていたから。 「どうしてですか?」 「逆に君は嬉しくないの?」 「やきもちくらいならいいですけど、過剰だと引きます」 「愛されている証拠だと思わない?」 「思わなくはないですけど…」
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