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「俺は嫉妬さえしてくれないなんて寂しいと思う」 「でも恋人が嫉妬の感情を出さないほうが有り難いって思いますよね?」 「いや、出してくれていいのにと思う」  そうなのか。よくわからない。喧嘩になるのがわかっていてもそう思うのだろうか。 「喧嘩にならないように済ませることが必ずしも上手くいくってわけじゃないと思う」 「だけど喧嘩にならないほうがいいですよね?」 「もちろんそうだけど。喧嘩が必要な時もあるでしょ」 「例えば?」 「お互いの気持ちを確認し合う時」 「喧嘩しないと駄目ですか?」 「そういうわけじゃないけどね。表面的な会話だけじゃ見えないことがあると思う」 「じゃあ志賀さんと恋人は表面的な会話ってことですか?」 「そうかもしれない」 「でも上手くいってますよね」 「うん、上手くいってる」 「それならいいじゃないですか」  上手くいっているのが一番じゃないか。それでいいだろう。無理に喧嘩する必要はない。 「でもそれって本当に上手くいってるってことになるのかな?」  逆に訊かれて、即答できない。 「表面的な会話って他人でもできる。そこから奥へ切り込んでいかないと、深い関係は築けないよ」  そこまで言われてやっと、志賀の言わんとすることがわかった。
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