2/35
5379人が本棚に入れています
本棚に追加
/664ページ
「もうすっかり粗食になってしまってね。君くらい若い時は肉が好物だったが」  そうぼやく小山内の前には野菜をメインにした品々があるのみだ。酒も以前は日本酒を嗜み、常に一升空けていたが、制限があるとかで今は一杯しか飲めないらしい。七十近くなるとそんなものか。  一方、高級割烹店のカウンター席で水落は寿司や肉などをどんどん注文して平らげていた。酒はそれなりに飲めるしあまり酔わないのだが、人と会う時は多く飲まないようにしている。酔って大事な情報を聞き逃したくないし、ただでさえ睡眠不足だから眠くなってもいけない。 「まあそうなりますよね。四十代くらいからきつくなるとは聞きます」 「しかし忙しい身分だから食っておかないと体力が持たんのだろう。法廷の検事なんかよりずっと身体を酷使しそうだから」 「正直きついですね。いっそのこと現場は全部事務官がやってくれて、検事はデスクで指揮するだけっていうシステムになってくれたら助かるんですけど」 「君はそんな仕事を望んじゃいないだろう。現場でバリバリ動きたい。野心的で活動的だ」  そんなイメージで見られているだろうことは知っている。しかし実際は寝たい。毎日長時間睡眠することを夢見て生きている。
/664ページ

最初のコメントを投稿しよう!