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水落が特捜部のエースであることは尊敬の対象だが、だから好きになったわけではない。
そのあたりのニュアンスがいつになっても上手く伝わらない。
抱くの抱かれるのという複雑な心境もおそらくまだ完全に理解してもらえてはいないと思う。でも、じゃあ水落の心理についても説明してもらったところでわからないことだらけなので、無理に理解する必要はないと思う。
問題はおそらく、そういう心理を持った相手を受け入れて、どれだけ上手く付き合えるかだろう。
色々難しいのだな、そんな簡単なものではないのだな、と思う。
ただ、理解しようとすることは怠りたくないし、理解してもらえるよう努めることも必要なのだろう。
さしあたって、もっとわかりやすく説明できるスキルが欲しい。
「あの、でも、好きは好きですから」
フォローするように言うと、また正面から抱きしめられてしまう。
「すげえ嬉しい。まじで」
水落の安心したような声が耳元でくすぐったく響いて、くすっと笑みが零れた。
エースだろうと毒舌だろうと、この人は自分の前ではこんなに素直で、感情をあらわにしてくれて、人間らしい。
そんな水落が、やっぱり愛しいと思う。
「まじでめちゃくちゃ嬉しいから、もう一回言って?」
そして、ちょっと可愛いと思う。
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