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「そうなんですか? 気にならないんですか?」
「理由なんて何でもいいよ。君が僕を好きでいてくれることが最も大事なことであって、後は瑣末だと思える」
そうなんですね、と流せなかった。
だってそれはつまり好きでいてくれるなら他に大事なことは何もない、と言っているも同然じゃないか。
それを嬉しいと思わないわけがないじゃないか。
「でももし何か見つけることがあればいつか伝えてほしいと思う」
「ここが好きだと思うところを、ですか?」
「そう。その日を楽しみにすることで生きていられる」
そう言って多月はまた微笑んだ。
生きていられる? 楽しみなんかなくても生きていることが当たり前だと思ってほしい。
それはやはりありえないのだろうか。
「好きなところなんかいつでもいくらでも言いますから、そんなこと言わないでください」
胸の詰まる思いでそう伝えると七海の言わんとする意図を読み取ってくれたようで多月は苦笑した。
「そうか。そうだね。そういう言い方は重かったね。何て言えばいいかな」
「俺の存在は関係なく生きていてほしいです」
「君がいないと僕の生きる理由がないのは事実だけどね」
「じゃあ俺と別れたら死ぬってことですか?」
その問いかけにも特に心を乱される様子もなく、答えてくれる。
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