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「実際そう思っていたとしても言われるほうはプレッシャーだよね。そんなことを言うつもりはない。もし別れても死なない。そう言えばいいかな?」
「いいわけじゃないですけど…」
それでも死なないと言われるだけでとてつもない安堵感を得られた。
「でもこのまま一緒にいてほしい。僕の望みはそれだけ。以前もそう言ったよね?」
もちろん憶えている。一生傍にいてくれるのかと問われて、答えられなかった。
それくらい愛してもらっていることは知っている。
今後心変わりがないなんて確証はない。
でも多月が言うからにはそうなのだろうと信じてしまっている。
自分に自信があるというわけじゃない。そこまで自分を過大評価していない。
だけど、そう信じられる。
ずっと好きでいてくれるのだろうと思える。
おかしいだろうか?
「そうですね。一緒にいたいっていうのは俺も同じです」
そう答えるのは予想外だったようで、多月は少し驚いて、でもすぐに微笑んだ。ほっとしたような安堵が二人の空間に浮かび上がるのが見えた気がした。
「そうなんだね」
「はい」
「嬉しいよ」
「そうですか」
「凄く嬉しいよ」
「そうですか」
「うん、本当に嬉しい」
何度も言わなくても聞こえてますけど!
いい加減恥ずかしくなって顔が見られない。耳まで赤くなって俯き加減で黙々とトンカツを食べている姿を見られていることはわかっている。
昼間から定食屋でする話じゃなかった。というか今さらだが誰かに聞かれていたらたまったものではない。
だってまさに『貴公子様が庶民の俺に』という状態を地でいっているからだ。
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