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 先日の七海と多月との会食は色々考えさせられた。  彼らの安定感、幸福感は何だろう。  七海がズバズバ言う性格の割に喧嘩もなさそうだった。おそらくは多月のあの包容力のせい。いくら七海がキャンキャン反発しようと、抑え込むことなく寛大に受け流しているのだろう。  あとは何だ。そうだ。多月は七海にまったく不満がないようだった。もっと好きになってほしいとか甘えてきてほしいとかそんな誰もが持つ欲求が一切ないように見えた。  ありのままの君が好きだよ、と言わんばかりだった。  それか。  ありのままの宝来くんが好きだよ! めちゃくちゃ好きだよ! …こういうんじゃねえよ。それは違うだろ。いくら俺でもわかるよ。何ていうかそんな軽さはなかったよ。え、俺が軽すぎ?  そう、好きだとか何とか愛の言葉を口にし合っていなくても、愛し合っている空気が伝わってきた。  それがひいては安定感、幸福感に繋がっているのではないか。  自分たちにないのはそれなのか。  悶々と考えながら地検のロビーを進んでいると、先日も宝来との会話で名前が挙がった王子様の姿を見つけた。  声をかける前に向こうもこちらに気づき、キラキラした微笑みを見せてくれる。あー吉葉とはレベルが違う。女なら惚れそう。やっぱり王子様って無敵だよ。
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