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「そんなに声はかかっていないよ」
「嘘ですよね。かかってますよね。手作りクッキーもらったり食事に誘われたりしてますもんね?」
多月がさらっと流そうとするので七海がそこで追い打ちをかける。
何で兄貴が知ってんの? と言いたそうにした卓実だが、多月への質問を続けていた。
「あ、やっぱりそうなんじゃないっすか。手作りクッキーってすげえ本気っぽいっつうか、何か念が籠もってそうですね? 食ってるんですか?」
「他の人はわからないけど、僕は知らない人から手作りの食べ物をもらっても困るんだよね」
「じゃあ食わないまま捨ててるんですか?」
「人にあげることが多いかな。男ばかりの職場だから誰でも喜んで受け取ってくれる」
ふーん。食べないんだ。あれだけ叩かれていた会計課の女も折角作ったのに可哀想だな。
「ま、そうでしょうね。俺も時々そういうのもらうけど彼女いる時は気まずいですもんね」
「で、七海くんはどうしてその話を知っているの?」
あ、そうなりますよね。こっちが逆に追及されるっていう。
だから白菜を包丁で切りながら淡々と多月に答えてやる。
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