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「じゃあ兄貴だって当然思うよね?」  あーそうくると思ってた。だから別に驚かないし赤くもならないし動揺なんて一切しないから! 「何が言いたいんだよおまえ。俺が課長に抱かれたがってる部下だって言いたいの?」 「そこまでは言わないけど。いやでも、流石に。流石に最近の二人の雰囲気が」  雰囲気が、で止められても困る。続きはどうした。二人の雰囲気が流石に見逃せないほどやばいってこと? デキてるんだってこと? ホモに見えるってこと? ゲイにしか見えないってこと? 「雰囲気が何?」 「えーと…超いい雰囲気」 「いい雰囲気って何?」 「えーと……相思相愛的な」  とうとう言った。  言われた。  ぐつぐつ煮える鍋を前にしてがっくりと項垂れてしまう。  しかし、ここで落ち込めば認めているも同然だ。いやもう認めるしかないのか。そうなのか。おまえの兄貴はそこにいる官僚様に抱かれているんだよ。あはは。と笑って認めればいいのか。屈辱的だ。もう兄としての威厳がゼロだ。元々ないから意味ないって? 「卓実くんはそういう雰囲気を前にして不快だということ?」  そこで冷静に対処してくれたのが対応力のある多月だった。何とかこの窮地を乗り切ってくれるのか。それともあっさり認めてしまうのか。
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