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あの夏の日から10年が経っていた。
私は残業で遅くなった為に、デパ地下で二人分の惣菜を買い、家路に急ぐ。
「マヤ。」
私を呼び止める聞き慣れた声。
振り向くとーーー
やっぱり圭くんだ。
「今、帰り?」
「ああ、急な残業。」
「それじゃあ、お腹空いたでしょ?」
「惣菜買ったのか?」
私の手元にあるデパートの紙袋を見て言う圭くん。
「そうよ、ダメ?だって帰ってから作ると遅くなるし…。」
そんな事を話ながら、いつもの帰り道の公園に差し掛かる。
すると圭くんが
「マヤ、ちゅうちゅうごっこしねぇ?」
と言ってくる。
私はもう何も言わずに目を閉じる。
チュッ
いつものように、軽く合わせるだけのキス。
ズーっとはしないんだ。
昔みたいに、ズーっとはね。
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