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「ごめん…まや。」
そう言うとまた圭くんは床にゴロンと寝転がった。
私は動けずそのままだ。
「まや、俺さ、お前の事、幼馴染みなんて思った事一度もねぇんだわ。」
圭くんは天井を見たまま話し出した。
「俺は気づけばお前の事が好きだった。ずっとずっと昔から……」
「圭くん…私……」
「知ってる、お前は俺をずっと幼馴染みとしてしか見ていなかった。」
「ごめん……」
「謝んなよ。でもまぁ、それは昔の話。今は俺にも漸く幸せにしてやりてぇって思える相手が出来たしな。だけどーー」
「だけど?」
「お前は俺にとって特別な存在だった。上手く言えねぇけど……大切な存在だった。お前が悲しめば俺の胸も痛んだ。お前が喜べば俺も嬉しかった。その感情を言葉で表すとしたら当時の俺は好きだという以外に思いつかなかった。」
「圭くん…」
「だからといって今更どうこうしたいとかって訳じゃないんだ。まぁ、こんなことしといて説得力ないけどさ。ただその思いだけは伝えたかった。どこかでちゃんと終わらせるためにも。」
「うん……ありがと。」
「でもまぁ、ちょっと終わらせるの長引いちまったけどな。大体さ、お前もちゅうちゅうごっことか断れよ。普通、大人になってまでしねぇぞ。」
圭くんが少し私の方を見た。
「えっ、私なの?でも、今日のは圭くん……」
「あぁ……まぁ、ちょっと飲みすぎた。わりぃな。」
「ううん。まやも…ごめん。」
私たちしかいないリビングに無音が響く。
「まや、もうちゅうちゅうごっこ終わりな?」
「うん……」
「お前さ、そんな顔すんなよ。ったく。」
そう言うと圭くんは私に背をむけた。
その日、結局、圭くんは泊まってった。
「酔っぱらって何もする気しねーよ。」
って笑ってたけど。
誰よりも私が怖がりなの知ってるから…
客間に布団を二組並べて敷いた。
私たちはその夜、手だけを繋いで眠った。
遠いようでそんなに遠くない昔。
私達がまだ子供だった頃の様に……
きっと、今の私たちがこうして眠るだけでもとてもいけない事なんだと思う。
だけど、今日だけは許してって。
窓の外にぽっかりと浮かぶいつかの月にお願いした。
だって
圭くんと私は幼馴染み。
今までもこれからも。
イケない子供だったあの頃と何も変わらない。
幼馴染みだから。
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