君だけ見えれば、それでいい。

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 初めのうちは、優馬がただ人より青い色が好きなだけだと思っていたけど、四ヶ月という時間を一緒に過ごしていくうちに、優馬が青に対して、異常なまでの執着心を持っていることに気づき始めた。  一番驚いたのは、優馬の家に初めて遊びに行ったときだった。  彼の部屋は青かった。一瞬、海の底に潜っているのではないかと錯覚したくらい青かった。壁紙から絨毯、ベッドシーツまで、青一色だった。 「こんなに青ばっかり見てて疲れないの?」と聞いたことがある。すると彼は「疲れるどころか、むしろ落ち着く」と答えた。  正直、変わってるなぁ、とは思う。だけど気持ち悪いとは思わないし、ましてやそれが原因で優馬のことを嫌いになったりするなんてありえなかった。  優馬と過ごす日々は、毎日が新鮮で楽しかった。  学校の帰り、分かれ道で立ち止まって、日が暮れるまでお喋りしたり。  コンビニで買ったアイスを半分こにして食べたり。  くだらない冗談に腹を抱えて笑い転げたり。  私のことを「アオ」と呼ぶその甘い声も、優しく抱きしめてくれるその広い腕も。  何もかもが大好きだった。
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