茜《あかね》

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茜《あかね》

 春になって、クラス替えがあって少しした頃。新しい教室に早くも慣れられたのは、幼馴染の志貴とまた一緒のクラスになれたからだと思う。  私の好きな人でもある志貴は、幼馴染で親同士の仲がとても良くて家族ぐるみの付き合いをしている。たまに友達にからかわれるけど、みんなお似合いだよと言ってくれる。お付き合いしてるわけではないけど、多分志貴も満更でもないと思うのだ。「短い髪の方が君に似合いだよ」だなんて幼馴染でもなかなか言わない事を言ってくれる。志貴も別に好きな子がいる風でもないし、一番仲が良いのは私だという自負がある。 「咲耶」  そんなある日のお昼に購買についてきてもらった帰り、突然志貴が立ち止まって誰かの名前を呼び捨てにしたのでぎょっとした。志貴が誰かの下の名前を呼び捨てにしたのは初めてだった。  視線を追うと、木の陰のベンチに座っているのは同じクラスの御堂さんだった。物静かで、透き通る肌と静かな目が印象的な美人だ。     
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