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恐る恐る窓の方へ移動して中をそっと覗き見る。保健室の中には二人の他に人はいなくて、高い日が差し込むこともない影になった部屋の中が言い知れぬ空気を作っていた。
カーテンも閉めていないそんなところで、志貴はあの青いリボンを彼女に差し出していた。
「寝にくいかと思って勝手にはずしてしまったんだ。ごめんね」
御堂さんが志貴の手からリボンを受け取ると、志貴はさらに笑みを深くした。
「三度目ですね、あなたの手からリボンを受け取るのは」
「……これは僕が贈ったものではないけれどね」
志貴と彼女が話すのなんて今が初めてといえるくらいのはずなのに、なぜ二人はあんなに親密で私が分からない話ができるのだろう?
「髪、伸ばしてくれたんだね。短い君も素敵だったけど、やっぱり君は長い方が似合うよ」
「偶然です。あなたのために伸ばしていたわけではありません」
「でも、これからは僕のために伸ばしてくれるんだろう?」
つっけんどんな返しにも甘く微笑む彼の表情は、正しく私が見たこともない顔だった。
志貴は、甘い笑顔のまま御堂さんの頬に手を添えて、顔を近づけていく。御堂さんもそれを受け入れて目を閉じた。するりと志貴が御堂さんの白い頬を指で撫ぜて、そうして志貴の目が私とかち合った。
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