咲耶《さくや》

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「……夢ではじめて声が聞こえた」  夢の中で贈られたリボンをそっと男の手に戻し、何の感慨もなくともすれば突き放すようにその手ごと押し戻したら、夢から醒めた。  何度か瞬きをして瞼にゆるく絡む眠気を払う。その後にゆっくりと体を起こして机の上に置かれた青いリボンを見る。夢から涌き出てきたわけでもなんでもなく普段から何となく気に入って使っているものだ。  あの白黒な夢の世界で、リボンの色だけは何故か鮮やかな青色だと分かったのだが、それになにか意味はあるのか。所詮は夢。意味を考えても作り出した自分の頭ですら分からないことの答えを、一体どこに求めるというのか。 「夢の中では突き返していたのだけれど」  鏡の前で髪を軽く半分結い上げてリボンで飾ったいつもの自分を見て小さく笑った。
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