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すっと目の前に手が差し出され、その手の上には贈り物であろう何かを包んだ鮮やかな青い小さな風呂敷包み。
「君の為に用意したのに」
どうしても私が受け取らないことを悟った男が目の前で包みを解いていく。中からは丁寧にあつらえられた真珠の首飾りが姿を見せた。
「……いち召使いには使う機会もありません。どうぞ、お嬢様へお贈りくださいませ」
「君に受け取って貰えないのなら処分するさ。また気に入りそうなものを持ってくるよ」
受け取って貰えなかったことに対しては悲しそうな顔をするくせに、用意した首飾りには少しの未練もないのか乱雑に懐へ仕舞いながらこちらを見て甘く微笑む。
「いつまでこんなことを続けるおつもりですか」
「君が僕の手から受け取ってくれるまで」
この男はきっと私が気に入りそうだと思った物は何でも持ってくるのだろう。金に糸目を付けないを地で行く男なのだ。
「……では、以前持ってらした青い綺麗な布を頂けますか。受け取りますから、もうこんなことはおやめ下さい。お嬢様の婚約者という自覚を持ってくださいませ」
「ありがとう! わかったよ、君が望むなら」
目元を薄く赤らめて蕩けるように笑う男に、本当に分かったのかこの男? と問いただしたくなるのを息を吐きながら抑え込んだ。
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