2 有り得ない出会い

1/12
前へ
/205ページ
次へ

2 有り得ない出会い

 目を覚ますと、空にうっすらとお日様が昇っているのが見えました。チェリィは慌てて起き上がり、自分の状況を確認します。  あの時黒いなにかに吸い込まれてジミーと離れ離れになってしまったはずでした。  けれどチェリィが目を覚ましたのは、あのお花畑の中だったのです。 「なにがあったの?」  チェリィは困惑しました。あれは夢だったのでしょうか。 「ジミー?」  辺りを見渡しながらジミーの名を呼びました。  確かに一緒にここまできたのに、どこにも彼の姿はありません。  一人で帰ってしまったのでしょうか。いいえ、ジミーがそんな薄情なことをするわけがありません。  ではなぜここにいないのか。  チェリィはとても心細くなりました。どうしてこんな肝心な時にいないのでしょう。  それにこの場所、昨夜とはなにか様子が違います。  鮮やかに咲き誇っていた花達は元気がなく、ほとんどしおれてしまっているのです。  あの美しかった女神の木は輝きを失い、静かにたたずむその姿はとても不気味に見えました。 「なによぉ、どうなっているのよ」  思わず不安の声が零れ落ちました。けれどきゅっと拳を握って自分に言い聞かせます。 「もう子供じゃないもん、一人ぼっちだって平気だもん」  いつまでもここでぼやぼやしているわけにもいかず、チェリィは自身を奮い立てながら村へ戻る為に歩き出しました。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加