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みらくる村の森は慣れ親しんだ遊び場だというのに、今夜はいつもと違い神秘的な雰囲気です。
進んでいく内にチェリィ達にも自分が森のどの辺りを歩いているのかわからなくなってしまいました。
でもこの先へ行かなければならないという思いがチェリィの中に生まれてきて、怯むことなくどんどん先へ進んでいきます。
「あっ」
しばらく歩いて行った先で二人は足を止めました。
辿り着いた場所は、不思議なお花畑でした。
チェリィがこれまで見たことがない花がたくさん咲いています。赤や青、桃色、黄色、どれもとても鮮やかな色をしています。
けれどチェリィ達が最も興味をひかれたのは、そのお花畑の中央にある物でした。
とても大きな木です。高く伸びた太い幹。不思議なことにその木全体が淡い光を放っていたのです。
チェリィは母から聞いた話しを思い出しました。
「これが女神の木?」
チェリィは驚きました。
いつか見つけ出してやろうとたくらんでいた場所ですが、まさかこんな形で辿り着くことになるなんて。
どきどきしながらも二人は木に近付いていきます。
「綺麗」
チェリィはほぅっと吐息に乗せるように言いました。
目の前にある大木は不思議な輝きを放っています。水色、紫、銀色。少しずつ変化する色にただただ見とれるばかり。
木の幹だけでなく、頭上を覆う葉も同じように輝いています。風が吹いて葉が擦れる音がします。
なぜこの木がこんな不思議な輝きを放っているのか、チェリィはもちろん十年間この辺りで生まれ育ってきたジミーにすらわかりません。
「ねぇ、チェリィ、早く帰ろう?」
不安そうに眉を寄せてジミーは訴えました。チェリィは反論しようと口を開きかけますが、身体をぶるりと震わせてジミーの裾を掴みます。
チェリィ達はお互いの表情に怯えの色が浮かんでいるのに気付きました。
目の前に広がっているのはとても神々しい光景のはずなのに、なぜだか恐ろしさを感じたのです。
空には満天のお星さまと、まあるいお月さま。
いつもは穏やかな夜空の光も今日は不気味に思えてきます。
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