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そして時は流れました。
みらくる村に引越してきてから二年目の春。チェリィは十歳になりました。
この村にきた頃よりも背も伸びて、長くなった赤い髪の毛は新しく買ってもらったリボンでポニーテールにしています。
見た目も中身も成長し、余計に大人ぶりたいお年頃になりました。
ぽかぽかと気持ちの良いお日様が村を照らすある日の午後、チェリィは村外れの公園にある東屋で年の近い女の子達と女子会をしておりました。
お茶とお菓子を持ちよってお喋りに花を咲かせます。
今日の話題は一週間後に迫ったお祭りについてと、好きな男の子についてです。
お祭りの日は告白のチャンスよと、女の子達は盛り上がっています。
「告白ねー。あたしにはまだ運命の人が現れていないから当分先の話だわ」
クッキーを弄びながらチェリィは言いました。
チェリィにとっての運命の人とは絵本に登場する王子様のように優しくて素敵な男性のことなのです。
こんなド田舎村でそんな素晴らしい相手に巡り合えるわけがないのですが、まだまだ夢を見たいお年頃であるチェリィはワクワクしながら殿方とのロマンチックな出会いを待ちわびておりました。
女の子達はそれぞれの思い人のことを考えてうっとりしております。
「やっぱり一番素敵なのはレイン君よね」
一人がそう言うと、周りから「わかるぅ」という声が上がりました。
「ええー?」
この意見にチェリィは同意しかねました。
そう、彼女達の言っているのは宿屋の息子さんであり、チェリィの母エイミーの弟子であるあのレインです。
チェリィよりちょっと年上の生意気な少年で、顔は良いけれど性格に問題がある為に友達はおりません。
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