1 新しい冒険

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1 新しい冒険

「森の中にはね、女神の木と呼ばれている大きな木があるのよ」  年に一度のお祭りの夜、月灯りの下でチェリィは母と手を繋いで広場を歩いていました。屋台の物売りの声やお客さん達の声。あちこちから楽しそうなざわめきが聞こえてきます。  母はこの地に古くから伝えられている、美しい木のお話をしてくれました。  森のずうっとずうっと奥に不思議なお花畑があり、色とりどりに咲き乱れる花達の中央には、とても大きな木がそびえたっているそうです。  チェリィの身長の何十倍もあるという高い高いその木は、全体がうっすらとした光に包まれていて、夜の闇の中でキラキラと葉を輝やかせるのです。 「女神さまに選ばれた人だけ、その木のある場所へ行けると言われているの」  真剣に話を聞いているチェリィに母はフフッと笑いました。 「女神の木にはチェリィの好きそうな素敵な伝説があるのよ」 「伝説?」 「チェリィも聞いたことがあるでしょう、お祭りの夜に愛を誓った恋人達は幸せになれるという話を」 「もちろん。そういうロマンチックな情報に抜かりはないわ!」 「もしもお祭りの夜に女神の木の下で好きな人と想いが通じ合ったら、その二人にはとても素晴らしい特別な未来が訪れるそうよ」 「へぇ! 素敵ね。まだ見ぬお婿さんと一緒にそこへいく日が楽しみだわ!」  母の顔を見上げてチェリィは瞳を輝かせました。  そうしてもう一度、女神の木と呼ばれている大きな木に思いを馳せました。  やはり母はチェリィのことを良くわかっています。チェリィにとってこういうロマンチックなお話はとても興味深かったのです。  まだ幼いチェリィは、将来その場所を見つけ出して誰かと愛を誓い合うという野望を夢見ました。
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