第一章 1+1=∞

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 相変わらず機嫌よさそうなデビルくん。私は相変わらずその十メートル後ろを歩いて行く。しばらく行くと、空き地に小学生くらいの子供たちが集まってるのが見えた。楽しそうに遊んでるのかと思ったが、どうもその中の一人の子がいじめられてるようで、殴られてるところをスマホで撮影されたりしている。その様子に気づいたはずだけど、デビルくんはデビルくんらしく止めずに去って行った。  私だってそんなに正義感が強いわけじゃない。今もコミュ障なくらいだから、小学校時代はもっとひどくて当時はそのせいでずいぶんひどい目に遭った。最初は名前を馬鹿にされるくらいだったけど、いつのまにか私の私物は全部みんなの共有物にされていた。誰かに使われてるせいで私のシャープペンシルがなくて困ってたとき、貸してあげると言われて渡されたシャープペンシルはよく見たら私のものだった。  誰も私を助けてくれなかった。だからこそ私は困ってる子を助けたい。助けられた子はきっと自分が一人ぼっちではないと気づくはずだ。そうすれば高校生になってもいまだに友達一人いない、私みたいなポンコツになることもないだろう。  「のどが渇いた。シンジ、おれたち全員になんか買ってこいよ」  「ノボルくん、お金は?」  「今日はシンジが出せよ。今度はおれたちが出すから」  〈今度〉という日が絶対に来ないことは言うまでもない。私は空き地に入っていき、いじめっ子のノボルの前で立ち止まった。ノボルほかいじめっ子たちが見知らぬ女子高生の乱入に戸惑っている。  「いじめなんてくだらないことはやめなさい」  「あんたに関係ないだろ!」  すごまれて正直怖いと思った。最近の小学生ってこんなに荒んでるの? いじめを止めに入ったことをすでに後悔していた。  ノボルたちを無視して、いじめられっ子のシンジくんの前に手を差し出した。シンジくんがおずおずと私の手をつかむ。  「バーカ!」  ノボルが捨て台詞を吐いて仲間たちと走って空き地を出ていった。なんとかシンジくんを助けられてよかったとホッとしたけど、そのとき強い殺意を背中に感じて思わず振り返った。
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