17人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ
小学生のノボルなんかで怖がってる場合ではなかった。ノボルの一万倍(体感比)以上の脅威が目の前にあった。いじめを見て見ぬふりして通り過ぎたはずのデビルくんが、なぜか殺意をみなぎらせて私をにらみつけてくる。
「いじめを止めたのか?」
なんでそんなこと聞かれたのか分からないけど、素直にうなずいた。
「おまえが助けたシンジはおれの弟なんだ」
あれほどデビルくんと接点ができないように、できないようにって気をつけてたのに、結局思い切り接点ができてしまった!
このパターンも読んだことある。おれのかわいい弟を助けてくれてありがとよ。いまどき珍しい正義感あふれるやつだ。そんなおまえに興味を持っちまったぜ。
背筋がゾワッとした。こんなデビルに興味を持たれたくない。私はただ静かに暮らしていたいだけなのに!
「何をぶつぶつ言ってやがる? 気持ち悪いやつだな」
妄想が声になって出てしまったらしい。たまにそうなる。そんなだからコミュ障って言われてしまうのだけど。
「と、とにかく、デ……あなたの弟さんだなんて知りませんでした。私は当たり前のことをしただけなので、感謝してくれなくてけっこうです」
〈デビルくん〉と言いそうになってしまった。危ない危ない……。
「なんでおれがおまえに感謝しなきゃなんねえんだ?」
「だって私はあなたの……」
デビルくんがシンジくんを怒鳴りつける。
「シンジ、先に帰ってろ。おれはちょっとこの女とサシで話がある」
シンジくんがちょこんと私に頭を下げて、言われるままに走り出した。姿はすぐに見えなくなった。
「シンジは弟といっても母親が違う。シンジの母親はオヤジの再婚相手で、おれはシンジの母親にはずいぶんいじめられたからな。仕返しということで、ノボルたちに命令して、シンジをいじめさせたんだ。それなのに、勝手にいじめを止めやがって。これ以上おれの邪魔をするならぶっ殺すぞ!」
最初のコメントを投稿しよう!