第一章 1+1=∞

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 弟のいじめを止めて感謝されるどころか、いじめの黒幕が兄であるデビルくんで、逆に怒られてしまった。誰かに殺すぞと脅されたのは生まれて初めてだ。私は震え上がった。そばを歩いてる人はいるけど目をそむけるだけで誰も助けてくれない。涙が出そうだった。  「おまえ、名前は?」  「城井(しろい)亜利(あり)」  「シロアリ?」  「シロじゃなくてシロイ!」  思わず大声になってしまった。デビルくんが弱みを握ったとばかりにニヤニヤ笑っている。小学生のときからこの名前のせいでさんざん馬鹿にされてきた。名付けてくれた親には悪いけど私はこの名前が大嫌いだ。  ちなみに、投稿するときのペンネームは黒井(くろい)亜利。ずいぶん普通だって? 名前なんて普通がいいよ。その代わり、私のマンガは普通じゃないという自負がある。もちろん変という意味でなく特別(スペシャル)という意味での〈普通じゃない〉だ。  「シロアリ! 名前、覚えとくからな。今度ナメた真似しやがったら覚悟しとけよ」  よりによってデビルくんに名前を覚えられてしまった。しかも一番呼ばれたくない呼び方まで。できることならデビルくんのいない星に移住したいと強く願った。
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