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トオルは相変わらず手を握ったままだ。そろそろ手が痺れてくる。
手を離して――と言おうと
トオルの方を見ると、
トオルはまた泣いていた。
「トオル…?」
「ごめん……
せっかく私とおんなじ人を
見つけたと思ってたから…
違ったと思うと……」
涙は後から後から流れ落ちる。
それと同時に、
ワンピースからも、
今カオルの手を握っている手や腕からも水が滴り落ちる。
「え…ト…オル?
ねえ、なんか、また濡れて…」
カオルの不安げな声も
聞こえてないのか、トオルは握っていた手を離し顔を覆った。
「独りだなんて……
ヒトリだなんて
サ ビ シ イ よ…――」
その言葉が、
カオルの胸を締め付けた。
もしかして…トオルも?
友達が五千人とか
ムチャクチャ言ってても…
トオルはずっと一人ぼっちだったの――?
ジクジクする胸を押さえ、
真っ直ぐにトオルを見つめた時、
「……!? トオル!」
トオルの体が
まるで…
雫みたいに
透けてきた。
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