1 放課後

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 僕には母親がいない。子供の頃はさみしくて仕方がなかったが、17になった今、そんな生活にもなれてしまった。  父はとても優しい。料理は決して上手くはないがカレーはナカナカ美味かった。  校庭でリキとキャッチボールをしていた。  僕もリキも部活には入っていない。  砂埃が舞う。『ピンポンパンポーン!防災久喜、竜巻注意報が発令されました……』 「なぁ、もう帰ろうぜ?」  リキが言った。  ポケモンGOをやりながら家路を辿った。  ヒトカゲにコラッタなんかを捕まえた。 「歩きスマホはイケないよ?」  透き通った声がした。 「高階先生」  高階凛子、臨時の音楽の先生だ。 「歩きタバコしてる奴に言われたかないよ?この間、彼と一緒にハーベストウォークにいたべ?」  リキが鋭い剣幕で言った。 「チッ、見られてたか?アレは彼じゃなくて弟」 「そうだったんだ?映画でも見てたんかと思った」 「歩きタバコしてたことは他の先生には黙ってて?」 「先生、ナカナカ美人だよな?俺、童貞中なの。エッチしてくんない?」 「七原クン、なんてこと言うの?」  リキの本名は七原力。ナナハラツトムなのだが、僕はリキって呼んでいる。   「ジョークだよ、真に受けんなよ?」 「ビックリした。小山ってさ?『君の名は』の監督が作品の舞台にしたことがあるんだって」 「あぁ、小山駅にそんな看板があったな?大してこれといったものはなかったな?」 「さぁ、早く家に帰んなさい?」  雲行きが怪しくなってきた。  遠くの方で稲光がしている。 「竜巻が来るらしい?見てみたくない?」  リキが笑いながら言った。 「あぶないわよ?こないだの西日本豪雨でだって何十人も亡くなったじゃない?」 「歩きタバコしてるクセに真面目なんだな?」  リキがちゃちゃを入れる。 「もう、あんまりイジメないでよ?」  父はまだ帰ってきていない。僕は小説を書くのが好きだ。  ノートパソコンを立ち上げに次々打ち込んでいく。  軍を除隊した鷹山は、酒場で妻にからむ酔っぱらいともめ、さらに追ってきた相手を殺害してしまう。過失致死で刑務所に服役するが、模範囚として仮釈放されることになり、囚人専用の輸送機に搭乗する。が、そこには爆弾テロ犯の小柳を始めとする凶悪犯たちが顔を連ねていた。そして離陸後、小柳の計画によって飛行機がハイジャックされ、正義感の強い鷹山は何とか事態を打解しようとする。  
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