2 イケナイ

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2 イケナイ

 僕は父からPSPをもらった。『ファンタルファンタジークライシスコア』で遊んだ。10年くらい前に流行ったゲームだ。意外なエンディングだった。ザックスが死んでクラウドに引き継ぐ。  ロープレは苦手だったがサクサク進めて面白かった。ヒロインのエアリス、胸がデカい!  ゲームを終えて図書館に出かけた。 『犯罪者図鑑』って本を読んだ。  フランソワ・ヴィドックは特に面白かった。  フランスの人物で1775年に生まれ、1857年に亡くなっている。  軍隊を20代で除隊され、入獄中にあらぬ罪を着せられ重労働刑を課せられた。その後10年、多くの罪人と情報を交換。脱獄と変装のプロになる。出獄後、パリ警察の手先として密偵に。最終的にはパリ地区犯罪捜査局初代局長に就任している。    週明け、宇都宮のがんセンターに出かけた。  小学1年生のときの担任だった水森寛治先生が肺癌で入院している。  ガンって言葉は本当にイヤだ。  水森先生の顔を見た瞬間言葉を失った。  ガリガリに痩せ、放射線のせいで髪の毛が全て抜けてしまっていた。言葉をかけられなかった。  ちょっとした言葉が傷つけるんじゃないか?  泣きそうになってしまい必死で堪えた。  幼児用のジュースくらいしか飲めなくなってしまっていた。パッケージの男の子の絵を見て「この子、シュン君に似ているね?」って言った。  僕は大沢俊一って名前なんだ。  昼は地下にある食堂。パスタにバーガー、味はまぁまぁだったが店員の感じが悪かった。  病室に戻って愕然とした。  高階先生が来ていたのだ。  リンゴを剥いてあげていた。 「アレ?大沢クン、何でこんなとこにいんの?」 「小学生のときの担任だったんです」 「へぇー」 「先生こそどうしてここに?」 「高階クンも僕の教え子だったんだよ。ゲホッゲホッ!」  水森先生が激しく咳き込む。  高階先生が背中を擦ってあげている。  病室には娘さんが書いた手紙が置かれてあった。 『パパ、早く元気になってね?おりがみができるようになったよ』  やるせいな。  病室を出て休憩コーナーに。高階先生が缶コーヒーを買ってくれた。 「放射線も抗がん剤も効果がなさそうね?」 「そうですね?」 「ワタシね?水森先生とつきあっていたんだ」  つまり、ふっ、不倫!?  清楚なイメージを抱いていただけあってショックだった。 「……」 「軽蔑した?」
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