【第一章】王道くんがやってきたよ!

9/10
前へ
/89ページ
次へ
可愛くて優しくて頼りがいのある親衛隊を持って、俺って本当に幸せだよね!  ニコニコニコ♪ 「…………天然タラシ……」 再び真っ赤になって固まるチワワちゃん達と、満面に笑みを浮かべる俺。 それを見て優ちゃんと祥ちゃんが呟いた言葉は、何故か全く聞こえませんでしたっ。 <飛鳥 視点> 「くそ、ムカつく」 俺様にしては珍しく今日は朝から学校に来たのだが。そこで奴に出くわした。 奴……千賀郁人。 去年、外部生として受験入学してきた奴は、その見た目から学園中の注目を浴びた。 外国の血が混じっているのか、やたら白い肌と淡い茶色の髪。陽に当たると金髪のようにも見えて凄く綺麗だ……と誰もが口にしていた。 だが、何より人目をひいたのは奴の笑顔。 穏やかで優しく、はかなげだったり可愛かったり。 その印象は人それぞれだったが、時折ゾクリとするほど艶めいて見える。 初めてそれを目の当たりにした瞬間、身体中を駆け巡ったものが何なのか分からず――俺様は奴に興味を覚えた。 当時はまだ生徒会入りしていなかったが、中等部でも生徒会長をつとめ、周囲から一目置かれる存在だと自負していた。 家柄(権力)・成績・容姿など全て学園トップクラス。 教師を含め、当然逆らう者などここには存在しない。万が一いたとしても、数日後にはそいつの家もろとも潰してやるけどな。 親衛隊の奴らは媚びを売り、暇潰しにいつでも何処でも好き放題ヤらせてくれる。 そんな俺様が声をかけてやれば、奴も感激して媚びへつらうに違いない。 そう思ったのだが。 『おい、お前の名前を教えろ!』 『え? あのぅ、千賀郁人ですけど。どちら様ー?』 『フッ、俺様は橘飛鳥だ。お前、俺様のモノになれよ』 『お断りしますー』 『は?!(即答? うッ、笑顔かわ)』  ………………  ………………  ………………? 『何やってんだ郁人、今のうちに早く逃げるぞ!』 『あ、優ちゃん? んと了解ー。(この人何で固まってんだろ)』 あの日、何故か奴の笑顔を間近に見て身体が動かなくなった俺様。 その隙をつき誰かに千賀郁人を連れ去られ、我に返った頃にはもう誰も居なかった。 .
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

847人が本棚に入れています
本棚に追加