【第一章】王道くんがやってきたよ!

3/10
前へ
/89ページ
次へ
「あああ、あの、全然大丈夫です」 「むむ、むしろ嬉しいですし」 「郁人様にぎゅってしてもらえて。僕達もう、死んでも良いくらいです」 途端に、全員が頭を激しく横に振って喋り出す。真っ赤な顔に大きな目をくりくりさせて――やっぱり可愛いなぁ。 「えー? 死んじゃ駄目だよぉ」 嬉しくて思わずニコニコしたら……あれ? また固まっちゃったね。 「危ない!」 「うわっ」 いきなり誰かに背中を押されて、しゃがんだ体勢のままチワワちゃん達の方へ倒れ込む。 「だ、大丈夫ですか郁人様!?」 三人が咄嗟にカバーしてくれたので怪我をしなくて済んだけど。えーと、何事? 振り向く俺の後ろに立っていたのは…… 「あ、橘生徒会長さんー? と、祥ちゃんだ。オハヨー」 とりあえず朝の挨拶をしてみる俺、偉い。 でも無視されちゃったけどね。クスン。 うーん、しかし。 何かもの凄く珍しい組み合わせだね。 俺様な生徒会バ会長こと “橘 飛鳥”(タチバナアスカ) 当然、超美形さんなんだけど。何か会う度に睨まれてる気がするー。 理由は分かんないけど、俺のこと嫌いなんだろうね。 そして 派手な赤髪を逆立ててる「祥ちゃん」こと “柳 祥太郎”(ヤナギショウタロウ) 祥ちゃんは、俺と優ちゃんの中学時代の後輩なんだよー。本人いわく、俺達を追いかけてこの学園に来たんだって。寂しがり屋さんだね。 あ、ちなみに会長は俺と同じ二年生だけど、祥ちゃんは一年生。 二人とも俺より背が高いんだぜ、コンチキショウ。 でもって。 相変わらず不機嫌そうに睨んでくる会長と、膝をつく俺。その間に立ち、まるで庇うようにこちらに背中を向けている祥ちゃん。 残念ながら俺様×不良ワンコ……って雰囲気じゃないみたいだね。 祥ちゃん、めちゃくちゃ殺気っぽいのを放ってるし。 どゆコト? 「何をなさっているんですか、郁人様」 周囲の生徒達がざわめく中、少し離れた下駄箱(ロッカー)の方にいた優ちゃんが駆け寄って来る。 腕を引っ張られ立ち上がる俺を見て、ようやく祥ちゃんが答えた。 「この糞ヤロー、郁人さんに蹴り入れようとしやがった!」 ん? 会長が俺に、蹴り? 何で? 「……本当ですか、橘会長」 .
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

847人が本棚に入れています
本棚に追加