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「あああ、あの、全然大丈夫です」
「むむ、むしろ嬉しいですし」
「郁人様にぎゅってしてもらえて。僕達もう、死んでも良いくらいです」
途端に、全員が頭を激しく横に振って喋り出す。真っ赤な顔に大きな目をくりくりさせて――やっぱり可愛いなぁ。
「えー? 死んじゃ駄目だよぉ」
嬉しくて思わずニコニコしたら……あれ?
また固まっちゃったね。
「危ない!」
「うわっ」
いきなり誰かに背中を押されて、しゃがんだ体勢のままチワワちゃん達の方へ倒れ込む。
「だ、大丈夫ですか郁人様!?」
三人が咄嗟にカバーしてくれたので怪我をしなくて済んだけど。えーと、何事?
振り向く俺の後ろに立っていたのは……
「あ、橘生徒会長さんー? と、祥ちゃんだ。オハヨー」
とりあえず朝の挨拶をしてみる俺、偉い。
でも無視されちゃったけどね。クスン。
うーん、しかし。
何かもの凄く珍しい組み合わせだね。
俺様な生徒会バ会長こと
“橘 飛鳥”(タチバナアスカ)
当然、超美形さんなんだけど。何か会う度に睨まれてる気がするー。
理由は分かんないけど、俺のこと嫌いなんだろうね。
そして
派手な赤髪を逆立ててる「祥ちゃん」こと
“柳 祥太郎”(ヤナギショウタロウ)
祥ちゃんは、俺と優ちゃんの中学時代の後輩なんだよー。本人いわく、俺達を追いかけてこの学園に来たんだって。寂しがり屋さんだね。
あ、ちなみに会長は俺と同じ二年生だけど、祥ちゃんは一年生。
二人とも俺より背が高いんだぜ、コンチキショウ。
でもって。
相変わらず不機嫌そうに睨んでくる会長と、膝をつく俺。その間に立ち、まるで庇うようにこちらに背中を向けている祥ちゃん。
残念ながら俺様×不良ワンコ……って雰囲気じゃないみたいだね。
祥ちゃん、めちゃくちゃ殺気っぽいのを放ってるし。
どゆコト?
「何をなさっているんですか、郁人様」
周囲の生徒達がざわめく中、少し離れた下駄箱(ロッカー)の方にいた優ちゃんが駆け寄って来る。
腕を引っ張られ立ち上がる俺を見て、ようやく祥ちゃんが答えた。
「この糞ヤロー、郁人さんに蹴り入れようとしやがった!」
ん?
会長が俺に、蹴り?
何で?
「……本当ですか、橘会長」
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