【第三章】楽しいお昼休みです

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あんな思い上がった糞ガキ、いっぺん痛い目合わさねーと駄目だろ。もちろん教育者として、な。 「フッ、安心しました」 「あ?」 「郁人のこと、心配してないという訳ではないようですね」 「あー? そりゃ当然だろ。一応あいつも可愛い俺の教え子だからな。担任が自分のクラスの生徒を心配して何が悪いんだよ。大体、問題でも起こされたら給料減るかもしれねぇし、下手すっと俺が解雇されちまうわ。むしろ俺の老後を心配して欲しいっつーの」 「なるほど。どうやら俺は、千葉先生の言葉を鵜呑みにしてはいけないようですね。非常に難解な愛情表現です」 何言ってんだ、こいつ。 「ただし、度が過ぎる行為は止めて頂きたい。万が一彼に危害を与えることがあれば……先生といえども覚悟なさってください」 「おお、怖いねえ」 結局、十分過ぎるくらいに肩入れしまくってんな。 愛情表現ってそりゃ俺じゃなくてお前の方だろ。まあ、難解どころか非常に分かりやすいけどな。 いやあ、若いって良いねえ。 急に、立ったままの五十嵐が身じろいだ。 そのまま片耳に装着した機械に手を添えて、誰かと話し始める。 「どうした……分かった、俺もすぐそちらへ行く」 「風紀の仕事か?」 「ええ、食堂で問題が発生したようです」 お、一瞬で鬼風紀委員長の顔になったな。 やれやれ、これでようやく俺も解放されるのか。 こいつの場合変に真面目すぎて、長々話してっと疲れるんだよ。まったく。 「そうだ、郁人に尋ねるのを忘れたのですが。千葉先生に差し上げます」 「ん? 校内新聞?」 どっから出したのか、号外の文字がデカデカと踊る紙を手渡された。 『親衛隊号泣! 千賀郁人くん溺愛宣言!?』――って何だこりゃ。 「ああ。それと郁人の首、右の鎖骨の辺りにも何か悪戯しませんでしたか」 「いや知らねーな。それがどうかしたかぁ?」 「……いえ、ご存知無いのでしたら別に構いません。それでは失礼します」 そう言い残すと風紀委員長、五十嵐律は立ち去った。何なんだよ。 確か鎖骨辺りっていや、さっき味見ついでに俺が――……。だが一応ギリギリ服で隠れる場所だし、あいつが知る筈無ぇよな。 .
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