【第一章】王道くんがやってきたよ!

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おおぅ、優ちゃん素が出掛かってますよ。 猫被りキャラじゃなくて良いの? 「ああ、そこのアホウが朝っぱらから盛(さか)りやがって。俺様の通行を邪魔していたからな、目障りな物を手っ取り早く排除しようとしたまでだ」 あ、なるほど。 ここ生徒玄関(下駄箱の前)だもんね、他の人に大変迷惑かけてました。 そりゃギャラリーも多い訳だ。 「だったら口で言やぁ済むだろーが。蹴り入れる必要がどこにあんだよ!」 「誰に口をきいてるつもりだ、一年。俺様の邪魔をして、ただで済むと思うなよ」 「何だと、てめぇ!」 今にも殴り掛かりそうな祥ちゃんと、それに全く動じる様子の無い会長。 うわ、何かこーゆう殺伐とした感じって嫌だなぁ。 そう思ってとりあえず声を掛けてみることにしたんだけど。 「あのー」 「おいっ、お前ら何やってんだ!」 「え?」  ザワザワザワザワ 俺達を遠巻きに眺めるギャラリーをかきわけ、突然現れたのは 「……何だお前は」 「……今時、瓶底メガネって」 「……キモオタ」 (黒いモサモサ頭はヅラだよね? え、ここでまさかの王道来たーッ!?) ちなみに上から順に、会長・祥ちゃん・優ちゃんの台詞と俺だけ心の声(絶叫)です。 しかし優ちゃん、さっきから猫被りきれてないんだけど。本当に良いのかな。 ともかく。 今、俺達の目の前で腕組みしながら立っているのは 『真っ黒なもっさりした髪型と、ぐるぐるの瓶底メガネ』 という微妙にバランスが悪くて変に目を引く姿の、知らない生徒。 ネクタイの色から二年生だと分かるけど、見た記憶は無いし。うーん? やっぱ例の転校生、しかも理想通りの王道くんかな。 うえっ?! でもいいの、今こんな形で登場しちゃっても。 そんな俺の心の焦りをよそに、全員の注目を一身に浴び、小柄で根暗なオタクにしか見えない少年が口を開いた。 「お前らなぁ、朝からこんな場所で喧嘩するなよ! 周りの奴らがロッカー使えなくて困ってんだろ。喧嘩したいなら他人に迷惑の掛からないとこで、思う存分やれ!」 「…………はあ?」 わあぉ、ミラクル。俺を除く三人が綺麗にハモっちった♪ あ、会長に睨まれました。 .
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