【第一章】王道くんがやってきたよ!

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「では、私達も行きましょうか」 「え? あっ……う、うん」 滝沢副会長が転入生を促し歩き出す。 俺らに背を向けて職員室のある棟へ進む二人の前には、自然と道が出来ていく。 代わりに、さっきまで呆けていた筈のギャラリーからは怪訝な眼差しを向けられてますが。 『何で副会長様があんな奴と』 『転入生……とか言ってなかった?』 『会長様や郁人様にも近付いてたし、あいつ許せない』 『いやあー! 皆様が汚れるうぅっ』 うわぉ流石。チワワちゃん達の非難めいた台詞とか、王道っぽいなぁ。 だけど実際に目の当たりにすると、言われる方はちょっと可哀相かも。 あ、王道くん(言われた本人)がこっち振り向いた。 とりあえずニッコリ笑って手を振……ん? 滝沢副会長に睨まれちゃいました。えへ。 あれだよねー。 「この子は私の物です。貴方には渡しませんから」 ってことですよね。うはっ、生BL最高! その調子でどんどん生徒会を含む美形な攻め達を落としていってね、王道くんっ♪ 「郁人さま、大丈夫ですかぁ? お怪我ありませんかぁ?」 ニヨニヨしながら二人の後ろ姿を眺めていると、優ちゃんが親衛隊モードで話し掛けてきました。 身長差の為、必然的に上目遣いなんだけどそれが超・可愛いの! 「うん大丈夫、ありがとー。祥ちゃんも(橘バ会長の蹴りから)助けてくれてありがとね」 「郁人さん……っ」 (チッ) ん? 何か今、優ちゃんが一瞬怖かったのは気のせいだよね。 「でもって一番のありがとうはー」 ぎゅううぅ チュッ♪ 「へあっ!?」 ぎゅううぅ チュッ♪ 「ふゃっ!?」 ぎゅううぅ チュッ♪ 「にゅあっ!?」 (ふ、郁人さんが親衛隊三人組に) (ハグして、頬にキスしやがった!) 「さっき、こけそうになったのを助けてくれて、ありがとうね。危うく怪我するとこだったから、本当に感謝してます」 ペコリと頭を下げてお礼の言葉を伝える。 ちなみに今のハグと頬っぺたチューは、俺なりに感謝の気持ちを表したものです。 信頼と親愛の印なんだよー。 だってさ、普通に考えたら祥ちゃんに突き飛ばされた訳で。いや、バ会長に蹴られるよりは良いけど。 もしこの子達がカバーしてくんなかったら俺、顔から地面にズリズリって……。 うわ、痛そう。 .
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