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ガタンゴトンガタンゴトン、電車はゆれる。
ガタンゴトンガタンゴトン、電車はゆれる。
母と駅前で合流し、私と母は電車に乗っていた。
いつも夜逃げのとき、私は母に行き先は聞かない。
母はいつも黙って、私をどこかに連れていく。
沈黙が辛くて、私は母に話しかけた。
「今日、引っ越しの準備をしてたらアルバムを見つけてね。入学式の写真もあって
懐かしかったな。そしたら私寝ちゃってて。写真を見たせいかな。
……お父さんの夢を見たんだ。」
母はそこでぴくっと、頭を動かした。それでも母は目の前をただ黙って見ている。
「……お父さんが死んだときの夢。お父さん、顔を真っ赤にして
首を吊って死んでたよね。自殺するような人だとは全然思わなかったよ。」
私は今まで、母に父の首吊りの話をしたことがなかった。
聞いてしまえばもう、後戻りできなくなる気がしていたからだ。
父の遺体を発見して私が倒れた後、目が覚めると私と母は電車に乗っていた。
私の額に冷たい手を当てて、母はこういったのだ。
「お父さんは自殺した。」と。
私はそれをずっと信じてきた。
私は母が大好きだ。
フルタイムのパートで働いて、忙しいのにいつもご飯の用意をしてくれて。
誕生日には小さいけどケーキを買って、二人でお祝いして。
二人でたくさんおしゃべりして、二人でずっと生活してきて。
私は母が大好きだった。
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