あの日の青さ。

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「――俺が絵を描いている姿がよかったんだっけ?」  自分で言ってて恥ずかしくなる。 「そうよ」  といい、続いて、 「アンタ上手じゃないって言ってるけど、私からしたらあんまり関係ないの。それが原因で嫌いになったりしないし、逆にアンタが絵をかいていないと私が嫌なの」 「は、ちょっと待ってくれ。っていうことは俺のことが好きなんじゃなくて、俺の絵が好きで付き合ってるってことなのか?」 「バカなのアンタ? 二年間付き合ってまだ私のことがわかってなかったの?」 「いや、今の言葉を聞いてそういう風に捉えるのは別におかしくないだろ」 「はぁ、ホント前から思い込んだらすぐその考え以外はできない性格なんとかした方がいいと思うわよ。もちろん絵に対しても興味がないとは言わないわ。アンタの表現しようとしている世界を見た時に、壮大で、言葉にならない素晴らしい作品」  でもね、といい、 「それ以上にアンタの絵を描いている姿が私は好きだったのよ」  描いている姿? 客観視したことないのでイマイチピンと来なかった。 「その世界を生み出そうと考え、悩み、楽しみ、苦しみ、それでもあきらめず頑張っている姿よ。何かに真剣に打ち込む人間に私は出会ったのが初めてだったからアンタにもっとその姿を見せてほしかったのよ」
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