あの日の青さ。

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 リビングには一輪の青い花が描かれた絵が飾られていた。  それは俺が、プロポーズしたときに送ったものである。厳密には絵の中の花を贈ったのだが、彼女がそんなものいらないと言い出し、その場で絵を描かされたのだが。 「え、なんでこれが……?」  何回か彼女の家に上がったことがあるが、こんな目立つ位置に置いてなかったはずだ。  てっきり俺は押し入れにでも入れているのだと思っていたが。 「この花、ワスレナグサでしょ?」 「は、はい。娘さんに僕からプレゼントしたものです。花言葉は“真実の愛”」  花屋にそう書いてあったのを今でも思い出す。なんてピッタリな言葉なんだろう、その言葉に後押しされて告白できた部分も多大にあった。  でもね、とお母さんは続く。 「もう一つ、その花には意味があってね」 ――――私を忘れないで。 「あの子にとってはそっちの意味に捉えたのね。自分のせいであなたが絵をのびのびと描けない。絵を描くあなたによっぽど惚れこんでいたのかしらね」  知らなかった。  そんな風に告白を捉えられていたなんて。  そして、最後に感じた謎もハッキリと解けた気がした。 「だから、就職活動を迎える前のこのタイミングで言ったのか」  就職活動が始まると時間が無くなる。ただでさえ絵を描いていない俺がそうなったらもう書くことはなくなるだろう。もちろん社会人になってからも。  今なら彼女との時間を無くせば絵を描く時間はある。  それで自分から別れることを言ったのか。 「あの娘はいつも言っていたわ。『絵も好きだけど、それを描いているあの人が大好きなの!』って」
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