ひとつ。

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ひとつ。

彼女は、私の”青”だった。 目に飛び込んできたのは簡素な白いTシャツ。色とりどりの熱帯魚。 ひとりの少年が海の底から海上を見上げ、その光を色とりどりの魚と一緒に浴びていた。 「すごい」 画面越しに声が出た。これほどまでに心が動かされたイラストは久しぶりだった。 すぐに私は感想を送った。この気持ちを正確に表現できる言葉がすぐに思いつかなかったので、簡単な言葉になってしまったがどうしても伝えたかったのだ。 『私、この絵がとても好きです。貴女の青が、好きです』 率直に言えば、そのイラストは一言に青と言える色味では無かった。 降り注ぐ光に照らされた深海はオレンジ色に照らされていたし、熱帯魚もカラフル。青いところと言えば少年のはいていたジーパンと下の方に見える光の届いていない影の部分くらいだった。 それでも私は、そのイラストに強烈なまでの青を感じた。 まわりにたゆたう水泡、水流になびく髪。光の差さ仕込めなかった淡い影。 何よりも、少年の表情だ。幸せそうに微笑むでも無く、かといって悲しげに眉をひそめている訳でも無かった。無表情に近い顔をしていたが、そこに”憂い”を感じた。 感情的な”青”。そんなイラストに、どうしょうもなく惹かれた。
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