ひとつ。

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数分後、彼女から返事が返ってきた。 『ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです』 当たり障りの無い文章だったが、私は手が震えるほど嬉しかった。 私の拙い言葉に、返事をしてくれた。こんなに素敵なイラストを描いて、返事もくれる優しい人。 一体、どんな人なんだろう。 このイラストがきっかけで、私は彼女の作品に触れることになった。 新作が出れば舞い上がり、感想を送る。丁寧に返事も返ってきて、また喜びでにやにやしてしまう。 イラストや言葉の中にあの”青”を見つけては画面越しに微笑んだ。 言葉は決して多くは無かったが、彼女の作品に出会い彼女の言葉に私は救われていた。 徐々に交わす単語が増え、行数が増え。彼女とは友人になった。 SNSで繋がり、一緒に旅行をしたりもした。幸いにも趣味が合い、彼女といつもくだらない話で笑い合うほどに仲がよくなった。彼女が落ち込めば私も悲しくなり、彼女が幸せならば私も嬉しい。 彼女の友人である私は、何年経ってもどうしようもないくらいに彼女のファンなのだ。 新しい作品ができあがれば、昔と変わらずに喜んで飛び跳ねた。 だが、最近彼女のイラストが昔と変わったと感じる事が増えた。色とりどりの色彩は昔から変わらず、彼女の好きな色は”青”だという。 決してイラストの魅力が無くなった訳では無い。描けば描くほど、彼女のイラストは美しく輝いた。 それでも、何かが私の中で違って見えた。
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