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第四章:ボン、キュッ、ボン
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「んん~ん・・・」と鼻息を漏らす京子。その膝の上にはファッション雑誌ミス・ハイティーンが開かれている。その特集記事『彼氏のハートを鷲掴み! 寝ている間に驚愕のバストアップ術!』を読んで、何故か落ち込んでいるのだ。読めば読むほど、己の身体のエロティシズムに自信を無くし、「そこまでして何とかしなきゃならないレベルなのか、私の身体って・・・」という、雑誌編集者の思惑とは異なる方向に思考が展開していた。
ホッペをぶぅ~と膨らませながらパラパラとページをめくると、とある記事の見出しが京子の目に飛び込んできた。
『教えます! 友達に「幸せそう」って思わせる為の3つの秘訣』
「これよ! コレコレ!」
京子は番台の上で小躍りした。そう、女子にとって重要なのは、自分が幸せかどうかではないのだ。自分が幸せに見えるかどうか、それが重要なのだ。
「さすがミス・ハイティーン! 女子の気持ちが判ってるわぁ」などと感心していると、女湯の脱衣所の奥で何やら大きなジェスチャーをしているおばさんが目に入った。彼女は近所の商店街で八百屋を営む幸恵さんだ。歳は既に40を超えており、一人息子が一浪して有名大学に入学した事が自慢の種であった。勿論、自宅に風呂は有るのだが、今は改築中とかで、ここ『華の湯』に通っている。その幸恵が京子に向かって、しきりに意味不明なジェスチャーを繰り返していた。
「えっ? 何?」
京子が訝しがって聞き返しても、幸恵はジェスチャーを繰り返すだけだ。
「なになに? おばちゃん、何?」
その両手は、体の前で上から下に向かって波を描く様に動いた。両手は左右対称の動きで、連動して動く口元は「お、う、お」と言っているように見える。そのコミカルな動きにつられ、京子が笑いながら言った。
「だから何? 声に出して言ってよ、おばちゃん!」
すると幸恵は声に出しながら、再びその動きをやって見せた。
「ボン、キュッ、ボン」
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