青い夢

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あまり思い出したくもないので記憶から追い出すように顔を洗い、朝食用にコンビニで買ってきたパンをかじり、化粧を始める。化粧は最近覚えた。やりはじめるとすっぴんで外に出られなくなる。 その時ピンポンと玄関の呼び鈴が鳴り、アコちゃんと決めていたことを突然思い出す。変な夢を見ていたからすっかり忘れていた。慌てて部屋の中に脱ぎ捨てた服やお菓子の袋などを片付ける。 朝ちゃんと起きられないわたしのために、一限の授業のある月曜の朝は、アコちゃんがうちに寄ってくれることになったのだ。アコちゃんの下宿先から大学までの道の途中に、わたしのアパートはある。出席点重視の月曜の一限。すでに欠席と遅刻の数を両の手で数えるほどになってしまったわたしを心配して、彼女のほうからうちへ寄ることを言い出してくれた。 わたしは宵っ張りで夜はいつまでも起きていられるのに、一度寝付くと朝は目覚ましでも起きない。さすがにこのままだと単位落とすよとサークル仲間から言われていた。 アコちゃんは同じ郷里の出だ。でも、もともと知り合いだったわけではない。大学に入ってから知り合った。一年の時は同じグループの中の一人、という間柄だったのが二年生になって急速に親しくなった。 「ちょっとまっててね」わたしがテーブルの上に並べていた化粧品を片付けるのをアコちゃんは小さな椅子に座って待っている。その椅子は牛乳パックで作ってピンクのキルティングを張ったお気に入りの椅子だ。だけど手足の長いアコちゃんがそれに座るとちょっと滑稽な眺めになる。
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