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「キース!」
「あら、貴女の方から此処に来るなんて。私が眠ってる間に何かあったようね」
「今はお喋りしてる暇はないの! お婆様が! お婆様が!!」
取り乱すケイシーに、キースは落ち着けと宥めた。しかし、ケイシーは一層錯乱状態となってしまった。
「……まったく世話の焼ける子ね」
そう言うと、キースは開いた右手を天にかざし、ケイシーへ向けその右手を振り下ろした。
「暫くそこで大人しくしてなさい」
ケイシーとキースの間に鉄格子が降ってきた。上下左右無限に続く鉄格子だ。
「お願い!! お婆様を助けて!!」
鉄格子に手をかけたケイシーは、その瞬間全身が痺れ、脱力しその場へ倒れた。
「こんなくだらない仕掛けも見破れないなんて。……ダメよケイシー」
不敵な笑みを見せると、キースは両腕を水平に伸ばし手を開いた。
両掌からうっすらと光が浮かぶ。
「フフ、懐かしいわね……我が妹、ケイシー。貴女がこの子に託した遺物、少し拝借するわよ」
キースの全身がぼんやり光を纏うと空間が粉々に割れ、見通しの効いた草原の中へ出てきた。
食らいつこうとする餓鬼どもが警戒し距離を取る。
マーヤは横の柱に倒れ掛けている。
現実空間に戻っただけで、状況は変わっていない。
それだけ確認するとキースはため息を漏らし、ロイとガイに言った。
「あなた達ね。こんな悪戯したのは。どうやらお仕置きされたいようね」
「バカな! 幻術から逃れるとは」
「フフ、あの子がまだ未熟だったから見抜けなかっただけ。さあ、お仕置きの時間よ」
「クソっ! お前たち、いただきますだ!」
すると、ガイの声に反応した餓鬼どもが再び襲ってきた。
「ケイシー見てなさい。あなたに託された遺物の力」
両腕を水平に伸ばし、手を開き構えるキース。
掌に纏う光が強く輝く。
その光が目が眩む程に弾けた時、そこから掌ほどの大きさの正方形の光が無数に形成され、キースを中心に円運動を始めた。
「あなた達、センバヅルって知ってる?」
「知らねえよ、そんなの」
「……でしょうね。いいわ。教えてあげる」
キースは、伸ばした両腕を胸の前で合掌すると印を結び始めた。
その動きに呼応して、無数の正方形の光が形を変えていく。
「降神、千刃鶴」
そして、天に向け手を伸ばし、喝を入れると光の折り鶴は方々へ散った。
「あぁ、貴女の遺物はなんて美しいのかしら。この光景、貴女にも見て欲しかった」
無数に拡散された光の折り鶴は、襲い来る餓鬼どもへ降り注いだ。
手、足、胴、首、身体の至る所を切り落とされた餓鬼どもは、苦しむ事なく皆静かになった。
「わかったかしら? これが降神・千刃鶴。……と言っても誰も聞いてないわね」
緑に包まれていた草原は、一面紫色に染まり、異臭を漂わせていた。
「あ……いけないわ。あの2人に誰の差し金か聞くの忘れちゃった」
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