le sacrifice ultime

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5、6歳の子どものような妖精と思しき生き物が二人、術士の頭上にフワフワ浮いている。 「あ~!ダメですよ!このサークルより内側へ一歩でも踏み入れたら……ですよ?」 「え?なんて?」 「だ・か・ら……です!」 キースはプリマがなんと言ったのか気になって仕方がなかった。様子を察したドンナは、面倒臭そうに術を解き、耳を貸せとジェスチャーする。 耳を貸すキース。 そして、 「バーーン!!!」 ドンナはキースの耳元で大声で叫んだ。 ふらつくキースを嘲笑うプリマ。 「ね?ね?面白かった?」 「ふん!不愉快な生き物だこと」 牽制を兼ねて、キースはプリマとドンナに向けて口から針を飛ばす。 たがまったく効いていない。 飛び道具が駄目ならと(メジャー)で打つがこれも効かなかった。 それならと、主人である術士に鞭を振り下ろした。が、鞭の真ん中あたりで千切れてしまい、術士まで届かなかった。 (バリアかしら?) 術士の頭上にはプリマ。 サークルを描くのはドンナ。 二人の間には境界線が張られ、プリマを支点にドンナがサークルを描くと三角錐を型取り、その中は絶対不可侵領域となる。 「どう?三大呪術の一つ、『絶対( )不可(コン)侵領(パス)域』の効果は?」 「なかなかのものね……じゃあ私の術も見ていただけるかしら?」 礼にと、キースも術を披露する。 「伝家(グラン)宝刀(クロス)」 キースは呪文を唱え、心臓に突き刺したロザリオを引き抜くと天に向かって投げた。 天高く放たれたロザリオが光の波動を発すると巨大な十字剣となり、プリマ、ドンナもろとも術士の上に落ちてきた。その衝撃で辺り一面は焼け野原と化し、中央には十字剣が突き立っていた。 「まるで墓標ね」 「プ…リマ、ドン…ナ……ありがとう」 息も絶え絶え、術士は地面から這い出てきた。 キースの『伝家(グラン)宝刀(クロス)』でプリマとドンナのバリアを突破し、術士に深刻なダメージを与えた。 その衝撃で術士は両脚を失ってしまった。 「辛そうよ?まだやるのかしら?」 「ち…血を……継ぐ者……め…命ずる。出でよ!『一日(いちじつ)の未来より来たりし者』」
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