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城からの追手に警戒しながらなんとか城下町までたどり着いたケイシーだが、町へ入ると今度は往来を行き来する人々が皆、自分を監視していて、今にも捕まえに来るのではないかと考えるくらい精神状態は逼迫していた。
ケイシーは思った。
追手と遭遇したらどうする。
闘えるのか。いや、追手に対抗する術がない。
いっそのこと今直ぐ楽になりたい。捕まってしまえばこの張り詰めた気持ちから解放されるのだろう。簡単なことだ。ただ城へ引き返せば後は誰かが勝手にやってくれる。
楽なものだ。
そうだ、そうしよう。
どうせこの場を逃れても、追手は延々やって来るから。自分が死ねばその後の事など知る由もない。闇の太陽が解き放たれても自分はもう関係ない。
でも、シンは……せめてもう一度会いたい。
それと……。
「お婆様!!」
自分がいなくなったら家に居る祖母はどうなるのか。
大切な家族。
それも唯一の。
ここまで育ててくれた祖母を放ってはおけない。苦楽を共にし、時に厳しく、時に優しく、生き方を教えてくれた。
まだ、何も……。
心の深淵に沈んでしまう寸前でケイシーは気力を取り戻した。
なりふり構わず我武者羅に走った。
市場を抜け、町の目抜き通りを過ぎ、角を曲がればもう家が見えて来るはずだった。
が、見えたのは、自分の家から黒い煙が上がっている光景だった。
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