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不安の波がケイシーに押し寄せる。
それは当然祖母の安否からくるものだが、もう一つ、城で言われたマークの言葉がケイシーの心にしこりを残していた。
『こんな風習があるって知ってたら女吸血鬼はこの国には来んだろ?』
未だにケイシーは、自身が女吸血鬼だとは認めたくなかったが、拷問部屋での出来事からそう考えざるを得ない決定的な事実を突きつけられた。そしてケイシーは思った。それなら、血の繋がっている祖母も、紛れもなく吸血鬼。
マークの言葉の裏を返せば、祖母はケイシーが女吸血鬼と知りながら、成人祭と称した魔女狩りに送り出した事になる。
祖母は何かがあるからそうしたのだろうか。
こんな事がなければ、自分の存在理由を問い詰めたりはしない。ケイシーは、一方的にやって来る運命に辟易していた。
しかし、このまま運命に振り回されて訳もわからず生きるのも辛い。その為にも、事の真相を祖母から聞き、いったい自分に何が起きようとしているのか知る必要があった。
家が近づくにつれて人が群れをなし始め、仕舞いには壁となってケイシーの行く手を阻んだ。それでも彼女はその細い腕で群衆を掻き分け、どうにかして前へ進もうとする。だが、いくらやっても人、人、人。
ただ、猛々しい黒煙の空高く伸びている様が見えるだけだった。
泉の湖畔に建つ素朴な家は、今、城の衛兵によってバリケードが築かれて近づけなくなっていた。
「退がれ退がれ、これより先は立ち入り禁止だ」
衛兵が人払いに躍起になっている。
自分の家だからと言って、正面切って出ていくわけにもいかない。
(こうなったらあそこを通ろう。お婆様には入るなって言われてるけど、そんな事言ってられない)
ケイシーは家とは反対の方角、森の中へ向かった。
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