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細切れとなった血の契約書がケイシーの視界を遮ると、真っ白の世界が辺り一面に広がった。
白以外は何も無く、空間に漂う香りが目の覚めるような清涼感を含ませていた。
感じたことのない空気。
冷たい気配が背中に伝い、ケイシーは振り向いた。
「キース……?」
「初めまして、依代の子。いいえ、私はケイシー=ハイチ。ようやく会えた……と言うべきかしら。フフッ」
その声の主は、名前以外は全て、キースそのものだった。
「あら、鳩が豆鉄砲を食ったみたいな顔。無理もないわ。私はキースの双子の妹」
「……双子の」
「そう。真紅の薔薇、キースの」
彼女が纏う冷たい空気は、彼女が発する透き通る声がそう感じさせている様だ。
しかし、ケイシーを見つめる眼差しは、どこか寂しげで憂いを内包している。
「依代の子、貴女に私たちの使命を押し付けてしまいごめんなさい。世界を守るためにはこうするしかなかった」
「酷いわ……勝手にそんな事背負わせて。私の意志はどうでもいいと言うの!?」
「そうは言わない。依代になるもならないも貴女の意志次第。ただ、貴女の意志がどうあれ運命はあるべき所へと向かうもの。願わくば、貴女にはこの古からの呪縛を解き放って欲しい。そして、姉を……キース姉さんを……」
そう言って、彼女の姿は消えた。
「……ケイシー……」
すると、空間に亀裂が生じ、ガラスが割れる様に真っ白の世界は崩れ落ちる。
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