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父親が率いる集団は王都へは直接向かわず、数日は離れた平原に陣を設けている軍勢のもとへと向かった。
『コロエ将軍。』
というのが父親の王国におけるツテらしく、そこの一家に放り込む形で立場を得る事になる。
ツテと言っても父コレイはその将軍から信頼を得ており、取り次ぎ云々を抜きにコロエ軍の陣営から将軍自らが顔を見せた。
『ハスレイ君か?』
父君に似ているが性格は似るなよ?と言って快活に笑う男が、王国では万の軍勢を預かっているらしい。
ともあれハスレイはコロエの下に転がり込まねばならないが、親との別れ以上に弟とのそれが厄介となった。
(普段から甘えれば良かったものを。)
兄上と声を上げ続ける弟も翌日までには涙を抑え、やがて一団は東の高原へと戻る。
『弟が泣き止んだら兄も、という義務は少なくとも王国には無いぞ?』
将軍コロエはハスレイの肩をポンと叩く。
それでも泣きませんと、父親の戦略に使われた長男は生まれ育った高原がある東の方をしばらく見ていた。
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