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「……ああ、こりゃ見事にそっくりだねぇ。見分けがつかないよ」
「やぁねお父さん、当たり前じゃないの」
「ヒビキはまだ寝てるのかい?」
「ええ、今コウタくんがつきそってるわ。麻酔がきれるまであと30分はかかるんですって」
「腹を切ったんだろ?想像するだけできゅーっと痛くなるなぁ」
「まあね、フツウ分娩よりも後がしんどいって、お隣の奥さんが言ってたわ」
「大層なこった。なんせ腹に二人も入ってたんだからな」
「まさか初孫が双子だなんてねぇ。それも一卵性の」
「可愛さ二倍ってことさ、忙しくなるなぁ。見分けがつくように色違いの服を用意しなくっちゃ」
「そうね。あっちがお姉ちゃんで、こっちが妹。同じ日に産まれたのにもう姉と妹が決まってるなんて不思議ね」
「そういや、昔はあとから産まれた方が姉貴なんて決まりがあったらしいぞ」
「あらどうして」
「いやぁ、先陣斬って出ていくのは先鋒、大将は後から登場って考えがあったんだとさ」
「へぇ、なんだか納得いかないわねぇ。せっかく先に産まれたのに」
「そりゃお前が姉貴だからさ。下からすりゃ、先に産まれただけじゃないかと思ってるよ」
「あら、お義兄さんにそんなこと思ってたのね」
「ガキの頃の話だよ。そんなことより、名前は決まったのかね?」
「えーっと、確か……」
病室のそこかしこから赤子の泣き声が響き渡っていた。
新生児室の中で、産まれたばかりの双子の姉妹は静かに眠っている。
どんな夢を見ているのか、誰にもわからない。
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